『タモキシフェン内服時に、いつまで子宮体癌を気にしなければならないか』
というご質問を12月10日の「医療者とのおしゃべり会」で参加者の方からいただきましたが、
回答が保留になっておりました。
高尾先生が検証の上、あらためて回答してくださいましたので、以下の通り掲載いたします。
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タモキシフェン内服と子宮体癌(子宮内膜癌)の関係
- A. Fleming 他 BJS2018:105:1098-1106
- 4つの試験の統合解析
タモキシフェン内服 5年と10年内服による子宮体癌の10年発生率は、1.5% vs 3.2%
- 3つの試験
タモキシフェン内服 10年内服による15年間の子宮体癌の発生率は、5年内服の
二倍で、ほとんどが閉経後女性。死亡率の差は0.4%
- 症状のない患者の定期的子宮体癌検査の有効性は示されなかった。
EBCTCG Lancet 2015:386:1341-52
- タモキシフェン内服5年時の子宮体癌発生率は、5年で6%,10年で1.2%
ちなみに、
アロマターゼ阻害剤内服5年での子宮体癌発生率は、5年で0.2%,10年で0.4%
- タモキシフェン内服5年時の子宮体癌5年、10年発生率を、年齢別に見ると
<55歳 0.3%, 0.3%
55-69歳 0.5%, 1.2%
≧70歳 0.8%, 1.8%
タモキシフェン5年、10年内服時に、いつまで子宮体癌を気にしなけばならないか、について述べた論文は見当たらなかったですが、少なくとも、55歳未満の人は、出血等の症状がなければ子宮体癌を気にする必要はなく、55歳以上の人でも、症状がなければ積極的に子宮体癌の検査を受ける必要は無いことが報告されていました。
閉経後の方は、術後ホルモン療法として、ほとんどがアロマターゼ阻害剤を内服されていると思いますので子宮体癌に関しては問題ないですが、何らかの理由でタモキシフェンを10年内服される方は、15年間は気をつける必要があると思います。
(文責 甲南医療センター 乳腺外科 高尾 信太郎 )
(参考)
乳腺癌診療ガイドライン2022
BQ2 タモキシフェンは子宮内膜癌(子宮体癌)発症のリスクを増加させるか?
ステートメント
- タモキシフェン内服により,主に閉経後において子宮内膜癌(子宮体癌)の発症リスクが増加するが,死亡リスクの有意な増加は認めない。不正性器出血などの症状がある場合は,婦人科での精査が勧められる。
CQ4 浸潤性乳癌に対して,術後5年間の内分泌療法後に内分泌療法の追加投与は勧められるか?
- タモキシフェン5年投与後にタモキシフェン5年追加投与を行うことを推奨する。
推奨の強さ:1~2(合意に至らず),エビデンスの強さ:中,
合意率:強い推奨43%(20/47),弱い推奨57%(27/47)
- 内分泌療法5年投与終了後にアロマターゼ阻害薬2~5年追加投与を行うことを弱く推奨する。
推奨の強さ:2,エビデンスの強さ:強,合意率:98%(46/47)